前回ので SAP NetWeaver ABAP のインストールは完了しました。ちなみに、試用版のインストールにおける傾向と対策は、下記のような感じでしょうか。

  • そもそも SAPinst が起動しない
    → OS など、環境が対応していない
    → JRE が入っていない
    → アンチウイルス
    → 偶然(サーバー再起動で直ったりします)
  • Windows ユーザー作成
    → パスワードポリシー
  • NetWeaver 起動
    → メモリ不足
    → TCP ポートの競合
    → ネットワーク関連
    → 偶然

エラーの原因は様々なので、結局はイベントログや、NetWeaver の起動ログなどを見て調べることになります。検索エンジンで検索すると、SDN のフォーラムなどがヒットすることもよくあります。必ず英単語で検索しましょう。

次に MaxDB の GUI クライアントツールと SAP GUI をインストールします。前者はゲスト OS、後者はホスト OS にインストールします。

MaxDB の GUI クライアントツールは 2 種類あり、今回ダウンロードした試用版には、Database Manager と、MaxDB Database Studio の両方のインストーラが含まれています。用途は同じなので、どちらか一つをインストールすれば十分です。後者の Database Studio の方が新しく、機能も多いです。しかしDatabase Studio は、Eclipse のプラグインとして開発されており、Database Manager より高負荷です。試用版ではどちらも 32bit ですが、Database Studio は 64bit 版があったりと、それなりに有利な点もあるのですが、起動/停止や、各種パラメータ設定などの基本的な機能は Database Manager でも当然行えます。32bit しかリリースされていませんが、64bit OS でも問題なく動きます。そんなわけで、Database Manager をインストールします。

以下のインストーラを実行して、ウィザードに従って進めるだけです。
MAXDBTOOLS\DBM76.exe

参考までに、Database Studio のインストーラは下記のファイルです。
MAXDBTOOLS\maxdb-studio-desktop-win-32bit-i386-7_8_01_16\SDBSETUP.exe

次に、SAP GUI をインストールします。今回はホスト OS に入れますが、もちろんゲスト OS に入れても動きます。NetWeaver 7.02 の試用版に同梱されているのは最新版の SAP GUI 7.2 のようです。7.2 は Windows 7 にも対応しており、もちろん NetWeaver 7.00 や R/3 などの過去の SAP 製品にログオンすることも可能です。インストーラは下記jのファイルです。

GUI\SAP_GUI_FOR_WINDOWS_720_PL3_CORE\SAP_GUI_for_Windows_7.20_PL3_CORE_Components.exe

なお、これは正式には SAP GUI for Windows というアプリケーションで、SAP GUI for Java と SAP GUI for HTML というアプリケーションも存在しています。for Java は 今回の NetWeaver 7.02 Trial にも入っています。名前の通り Java アプリケーションなので、Windows 以外にも Linux や Macintosh でも動くと思います。試したことはないですが。SAP GUI for HTML は、Web アプリケーションで、これは NetWeaver ABAP の機能の一つなので、特にインストールすることなく、誰でも使えます。微妙に設定が必要ですが、規定の URL にアクセスするだけです。

SAP GUI のインストールもウィザードに従って進めていくだけで、特筆すべきところはなしです。

以上でインストール作業は完了です。

細かい操作手順については、そのうち書いていく予定ですが、とりあえず起動/停止の手順と、SAP GUI 操作の初歩の初歩を紹介します。

まずは NetWeaver の起動/停止。方法はいろいろありますが、GUI を使った基本的な操作から。

NetWeaver をインストールし終わると、デスクトップに SAP Management Console というショートカットができます。これが SAP の GUI 管理ツールです。MMC のスナップインとして自動的にインストールされています。SAPMMC と呼ばれることが多いです。[ファイル名を指定して実行] に sapmmc.msc と入れて実行しても起動できます。

MMC スナップインとして追加されている、ということは、そうです、COM です。%SystemRoot%\System32\sapmmc.dll という DLL が存在し、こいつが COM サーバーとして動いています。こいつの仕様が公開されているかどうかはちょっと不明ですが、見たことないです。プログラム的に NetWeaver の起動停止を行ないたい場合は、WSDL が公開されている Web サービスを使うことができます。そもそもコマンドラインツールがあるので、それを使うことが多いです。

こんな画面です。直感的に分かると思いますが、三角が起動で、四角が停止です。なお、このツール自体は、Windows サービスである sapstartsrv.exe と SOAP で通信しており、sapstartsrv サービス経由で起動/停止、及び、コンソールに表示されるプロセスのステータス情報の取得などを行なっています。アイコンが緑色だと起動で、黄色は起動/停止中、灰色が停止です。ライセンス期限が切れると赤くなったりと、カラフルなやつです。

NetWeaver は SAPMMC で停止できますが、MaxDB インスタンスは止まっていません。そこで、インストールした Database Manager を使います。スタートメニューとデスクトップにショートカットができているので、そこから起動します。このツールも、見たとおりに操作すれば OK です。ただし、こちらは最初にインスタンスを登録しなければなりません。今回の NetWeaver 試用版では、以下の情報でインスタンスを登録してください。

  • データベース名: NSP
  • ユーザ名: superdba または control
  • パスワード: NetWeaver インストール時に入力したパスワード

インスタンスが登録されると、下図のようにインスタンスの情報が出てきます。シンプルで分かりやすいです。ツールバーの赤いボタンで停止、緑のボタンで起動です。

当然のことですが、停止の時は、NetWeaver が先で、その後にデータベースを止めます。起動はその逆で データベース、NetWeaver の順で起動します。実は NetWeaver も データベースも起動中のまま、OS をシャットダウンしても意外と平気だったりしますが。

起動/停止を覚えたところで、次は SAP GUI の操作です。こんな外見です。SAP GUI 7.1 とちょっと見た目が変わりました。

こちらも MaxDB と同様、インスタンスを自分で追加しなければなりません。Ctrl+N を押すと、新規エントリ画面が表示されるので、ウィザードに従って進めていきます。

[ユーザ指定システム] のまま、[次画面] をクリックします。

必要な情報を入力します。今回インストールしたシステムは以下ですので、それを入力します。

  • システムID: NSP
  • インスタンス番号: 00

あとはデフォルト設定でよいので、ここで [終了] をクリックします。

システムが追加されました。ダブルクリックすれば起動します。

ですが、その前に、サーバー側でファイアウォールの設定が必要です。SAP GUI と NetWeaver は DIAG というプロトコルで通信していることは触れましたが、DIAG も TCP の上位プロトコルなので普通にポートを開ければいいです。今回はインスタンス番号が 00 なので、3200 ポートを許可する受信ルールを作れば接続できます。使い方次第では他のポートも開ける必要がありますが、とりあえずここでは 3200 だけ開けます。例えば Web サーバーとしては、HTTP ポート 8000 を使っています。

接続するには、SAP GUI に追加したエントリをダブルクリックします。ログオン画面が出てくるので、既定のユーザーアカウントを入力します。以下はその一覧です。
(クライアント/ユーザー名/パスワード)

  • 000/SAP*/インストール時に入力したパスワード
  • 000/DDIC/インストール時に入力したパスワード
  • 001/SAP*/インストール時に入力したパスワード
  • 001/DDIC/インストール時に入力したパスワード
  • 001/BCUSER/abcd1234

クライアントって何、という質問に答えるのはけっこう厄介。独立したデータを持てる、NetWeaver 独自の単位です。データの一部を完全に独立して持つことができ、一方 ABAP プログラムは全てクライアント間で共通です。特に決まった使い方はなく、例えば、1つの検証サーバーを立てておいて、検証用クライアントをたくさん作っておくと、複数のデータでの検証が一つのサーバーで実施できてエコ!みたいな感じです。

000 というのは特別なクライアントなので、むやみやたらと変更してはいけません。そんなわけでここでは 001 に ユーザー BCUSER でログオンします。

ログオンすると以下の画面が表示されます。

左上のテキストボックスに、数百と存在する「魔法のおまじない」を入力してエンターキーを押すと、そのおまじないに沿ったプログラムが実行され、NetWeaver のあらゆる機能を使うことができます。ERP であれば、受注や入庫、入金といった基幹システムの画面が出てくるのです。この「魔法のおまじない」のことを、トランザクションコードと呼びます。