[SAP] ABAP 開発環境をインストールする Part3
前回ので SAP NetWeaver ABAP のインストールは完了しました。ちなみに、試用版のインストールにおける傾向と対策は、下記のような感じでしょうか。
- そもそも SAPinst が起動しない
→ OS など、環境が対応していない
→ JRE が入っていない
→ アンチウイルス
→ 偶然(サーバー再起動で直ったりします) - Windows ユーザー作成
→ パスワードポリシー - NetWeaver 起動
→ メモリ不足
→ TCP ポートの競合
→ ネットワーク関連
→ 偶然
エラーの原因は様々なので、結局はイベントログや、NetWeaver の起動ログなどを見て調べることになります。検索エンジンで検索すると、SDN のフォーラムなどがヒットすることもよくあります。必ず英単語で検索しましょう。
次に MaxDB の GUI クライアントツールと SAP GUI をインストールします。前者はゲスト OS、後者はホスト OS にインストールします。
MaxDB の GUI クライアントツールは 2 種類あり、今回ダウンロードした試用版には、Database Manager と、MaxDB Database Studio の両方のインストーラが含まれています。用途は同じなので、どちらか一つをインストールすれば十分です。後者の Database Studio の方が新しく、機能も多いです。しかしDatabase Studio は、Eclipse のプラグインとして開発されており、Database Manager より高負荷です。試用版ではどちらも 32bit ですが、Database Studio は 64bit 版があったりと、それなりに有利な点もあるのですが、起動/停止や、各種パラメータ設定などの基本的な機能は Database Manager でも当然行えます。32bit しかリリースされていませんが、64bit OS でも問題なく動きます。そんなわけで、Database Manager をインストールします。
以下のインストーラを実行して、ウィザードに従って進めるだけです。
MAXDBTOOLS\DBM76.exe
参考までに、Database Studio のインストーラは下記のファイルです。
MAXDBTOOLS\maxdb-studio-desktop-win-32bit-i386-7_8_01_16\SDBSETUP.exe
次に、SAP GUI をインストールします。今回はホスト OS に入れますが、もちろんゲスト OS に入れても動きます。NetWeaver 7.02 の試用版に同梱されているのは最新版の SAP GUI 7.2 のようです。7.2 は Windows 7 にも対応しており、もちろん NetWeaver 7.00 や R/3 などの過去の SAP 製品にログオンすることも可能です。インストーラは下記jのファイルです。
GUI\SAP_GUI_FOR_WINDOWS_720_PL3_CORE\SAP_GUI_for_Windows_7.20_PL3_CORE_Components.exe
なお、これは正式には SAP GUI for Windows というアプリケーションで、SAP GUI for Java と SAP GUI for HTML というアプリケーションも存在しています。for Java は 今回の NetWeaver 7.02 Trial にも入っています。名前の通り Java アプリケーションなので、Windows 以外にも Linux や Macintosh でも動くと思います。試したことはないですが。SAP GUI for HTML は、Web アプリケーションで、これは NetWeaver ABAP の機能の一つなので、特にインストールすることなく、誰でも使えます。微妙に設定が必要ですが、規定の URL にアクセスするだけです。
SAP GUI のインストールもウィザードに従って進めていくだけで、特筆すべきところはなしです。
以上でインストール作業は完了です。
細かい操作手順については、そのうち書いていく予定ですが、とりあえず起動/停止の手順と、SAP GUI 操作の初歩の初歩を紹介します。
まずは NetWeaver の起動/停止。方法はいろいろありますが、GUI を使った基本的な操作から。
NetWeaver をインストールし終わると、デスクトップに SAP Management Console というショートカットができます。これが SAP の GUI 管理ツールです。MMC のスナップインとして自動的にインストールされています。SAPMMC と呼ばれることが多いです。[ファイル名を指定して実行] に sapmmc.msc と入れて実行しても起動できます。
MMC スナップインとして追加されている、ということは、そうです、COM です。%SystemRoot%\System32\sapmmc.dll という DLL が存在し、こいつが COM サーバーとして動いています。こいつの仕様が公開されているかどうかはちょっと不明ですが、見たことないです。プログラム的に NetWeaver の起動停止を行ないたい場合は、WSDL が公開されている Web サービスを使うことができます。そもそもコマンドラインツールがあるので、それを使うことが多いです。
こんな画面です。直感的に分かると思いますが、三角が起動で、四角が停止です。なお、このツール自体は、Windows サービスである sapstartsrv.exe と SOAP で通信しており、sapstartsrv サービス経由で起動/停止、及び、コンソールに表示されるプロセスのステータス情報の取得などを行なっています。アイコンが緑色だと起動で、黄色は起動/停止中、灰色が停止です。ライセンス期限が切れると赤くなったりと、カラフルなやつです。
NetWeaver は SAPMMC で停止できますが、MaxDB インスタンスは止まっていません。そこで、インストールした Database Manager を使います。スタートメニューとデスクトップにショートカットができているので、そこから起動します。このツールも、見たとおりに操作すれば OK です。ただし、こちらは最初にインスタンスを登録しなければなりません。今回の NetWeaver 試用版では、以下の情報でインスタンスを登録してください。
- データベース名: NSP
- ユーザ名: superdba または control
- パスワード: NetWeaver インストール時に入力したパスワード
インスタンスが登録されると、下図のようにインスタンスの情報が出てきます。シンプルで分かりやすいです。ツールバーの赤いボタンで停止、緑のボタンで起動です。
当然のことですが、停止の時は、NetWeaver が先で、その後にデータベースを止めます。起動はその逆で データベース、NetWeaver の順で起動します。実は NetWeaver も データベースも起動中のまま、OS をシャットダウンしても意外と平気だったりしますが。
起動/停止を覚えたところで、次は SAP GUI の操作です。こんな外見です。SAP GUI 7.1 とちょっと見た目が変わりました。
こちらも MaxDB と同様、インスタンスを自分で追加しなければなりません。Ctrl+N を押すと、新規エントリ画面が表示されるので、ウィザードに従って進めていきます。
[ユーザ指定システム] のまま、[次画面] をクリックします。
必要な情報を入力します。今回インストールしたシステムは以下ですので、それを入力します。
- システムID: NSP
- インスタンス番号: 00
あとはデフォルト設定でよいので、ここで [終了] をクリックします。
システムが追加されました。ダブルクリックすれば起動します。
ですが、その前に、サーバー側でファイアウォールの設定が必要です。SAP GUI と NetWeaver は DIAG というプロトコルで通信していることは触れましたが、DIAG も TCP の上位プロトコルなので普通にポートを開ければいいです。今回はインスタンス番号が 00 なので、3200 ポートを許可する受信ルールを作れば接続できます。使い方次第では他のポートも開ける必要がありますが、とりあえずここでは 3200 だけ開けます。例えば Web サーバーとしては、HTTP ポート 8000 を使っています。
接続するには、SAP GUI に追加したエントリをダブルクリックします。ログオン画面が出てくるので、既定のユーザーアカウントを入力します。以下はその一覧です。
(クライアント/ユーザー名/パスワード)
- 000/SAP*/インストール時に入力したパスワード
- 000/DDIC/インストール時に入力したパスワード
- 001/SAP*/インストール時に入力したパスワード
- 001/DDIC/インストール時に入力したパスワード
- 001/BCUSER/abcd1234
クライアントって何、という質問に答えるのはけっこう厄介。独立したデータを持てる、NetWeaver 独自の単位です。データの一部を完全に独立して持つことができ、一方 ABAP プログラムは全てクライアント間で共通です。特に決まった使い方はなく、例えば、1つの検証サーバーを立てておいて、検証用クライアントをたくさん作っておくと、複数のデータでの検証が一つのサーバーで実施できてエコ!みたいな感じです。
000 というのは特別なクライアントなので、むやみやたらと変更してはいけません。そんなわけでここでは 001 に ユーザー BCUSER でログオンします。
ログオンすると以下の画面が表示されます。
左上のテキストボックスに、数百と存在する「魔法のおまじない」を入力してエンターキーを押すと、そのおまじないに沿ったプログラムが実行され、NetWeaver のあらゆる機能を使うことができます。ERP であれば、受注や入庫、入金といった基幹システムの画面が出てくるのです。この「魔法のおまじない」のことを、トランザクションコードと呼びます。